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西の都の物語

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冬が始まるよ♪

迷い店

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「とぶ船」

「終わりのない物語」

「耳をすませば」

そんな物語達。



                                ※※



湯煙の街を横に眺めながら、光吉で高速を降りる。

よくある、ごくふつうの街。

しばらく続いた寒気が去り、真冬の曇天からのぞき始めた青空がまぶしく街を照らし出している。

ごくふつうの街に暖かな陽光があふれている。



「明日、大分の方に寄る用が出来まして伺おうと思っているのですが、お店は開いていますか?」

「いつ来ていただいてもいいですよ。お店ではなく、自宅のマンションでやっておりますので。」



インターを降りて、5分も走らないうちに、そのマンションに辿り着く。

ナビっていうのは便利なものだ。

目の前のマンションは、団地以降、バブル以前、そんなたたずまい。



管理人室の前を通り抜けると、目の前にエレベーターが現れる。

少し古いエレベーターは、しかし、きちんと整備されていて、おそらく実働30年近いのだろう。

「0時から、午前4時まではエネルギー節約のためにエレベーターを停止します」

そんな張り紙が張ってある。



目的の場所は8階。

エレベーターは、ずいぶんとゆっくり上がって行く。

ああ、最近はずいぶんとエレベーターのスピードも上がってたもんなぁ・・・。

なんて思う。

でも、心地のよいスピード。



エレベーターを降りて、さて、右、左、どっちに向かえばいいのかな、と。

808、809・・・

ああ、この順番ならこっちかな。

と、きょろきょろしていると、ある部屋の前に立っている学生服姿の男の子に声をかけられた。



「こんにちわ。」

「こんにちわ。」



彼の前を通り過ぎた後、僕の後ろからやってきた女性がいたらしい。

彼に声をかけている。



「あら、今日は鍵を忘れたの?」

「あー、はい。」

「じゃあ、うちで待ってなさいよ。」

「はい。」



あー、そういえば、小さい頃、団地に住んでた時、よくそーやって声をかけてもらったなぁ・・・。

クスクス

そんなことも、もう、なくなっちゃたね。

クスクス

懐かしい。

そうだよ、ちゃあ。

ちゃあも小さい頃住んでた家が長屋みたいだったって言ってたけど、僕の団地もそんな感じだった。

と、17年前の彼女に30年前のことを伝えられなかったことを突如思いついたり。



目的の部屋は、どうやら、廊下の一番先。

突き当たりの最後の部屋で、その部屋だけ扉の向きが正面に向いている。

冬のやわらかな日ざしが廊下を明るく照らしている。

ああ、この光は柔らかな写真の光の具合だねぇ。

と、廊下を進んでいると、正面の扉がキィと開く。



「やあ、いらっしゃい」



中からは優しい声のおじいさんが出てきた。

あれ?この人、なんでこのタイミングで扉を開けられたんだろう?

という疑問は湧かない。

その扉は、当たり前のように開き、当たり前のように中からおじいさんが出迎えてくれた。



僕は、ずいぶん前からこの扉が、当たり前のように開くことを知っていた。

そして、それを当たり前のこととして、当たり前に受け止め、驚きもしないことを知っていた。

そんな記憶が一瞬のうちに生まれ、そして、錯綜する。

デジャビュ



夕暮れ前の柔らかい光に包まれた冬の午後の一幕。
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by hot_soul | 2009-01-16 13:13 | 夜の戯れ言