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西の都の物語

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冬が始まるよ♪

おじいさんの小さな店

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「おじいちゃんが大好きだったんですね。」

と、電話の向こうの声の主は言った。

その声の響きがとても優しかったから、このお店で修理してもらおう、と思った。



その後、もう少し、大分カメラ修理センターについて調べると、

色々な修理屋さんでギブアップだったカメラをなおしてくれる最後の砦っぽい店だということ、

全国の人がなおしてもらっていること、

最近出来た、キャノンの大分修理センターとは別物っぽいということだった。



最初は日研テクノか、浜松カメラサービスでなおしてもらおうかなぁ、

でも、ちょっと遠いしなぁ、と、近郊の修理屋さんを捜してたいたら、

たまたま大分カメラ修理センターのことを知って、

その声の響きに惹かれて修理を頼んだだけだったのだけれど、

どうやら、その道では相当有名な修理屋さんだったらしい。



                                  ※※




招き入れられたマンションの一室は、とてもきれいに整理されていて、

押入には色々な部品とりようのカメラがズラッときれいに並び、

机の上は、今すぐにでも修理を始められるように、きちんと修理器具が並んでいる。



あ、この部屋、じいちゃんの書斎に似てる・・・。

そんな感想。



ゴルゴ13なんかに時々出てくる、職人気質の銃器屋のじぃさんの部屋のような、

まさにそんな感じの、でも、とても明るく日光の差し込んでくる部屋。



色々と看てもらううちに、祖父のOM-2が相当の重傷だと言うことが分かってきた。

途中、奥の部屋に行き、おじいさんがきちんと組み立てなおした完成品をいくつか見せてもらった。

中古の品とは思えない、新品同様におじいさんが生き返らせた見事なカメラの数々。

それが、きちんときれいに並んでいる。

それを見せていただけるだけで幸せ気分。



「もう、ずいぶん年だし、手も節々が痛くて。そろそろ引退しないといけないんですけど、カメラを修理するのが好きで・・・。」



祖父のカメラをきれいに直すと、おじいさんが完成させたOM-1と同じくらいの値段が必要になるらしい。

電子部品を使ったOM-2より、メカニカルでシンプルなOM-1は壊れにくい。

でも、そういう問題でもない・・・。

もちろん、おじいさんもそのことをよく分かってらっしゃる。



「やっぱり、もう、このカメラは駄目ですか。」

OM-2は基盤が壊れたら再起不能だということは、僕も調べて知っている。

寿命、が来てしまったんだろうな、ということもうすうす分かっていた。

この人に、そう言って貰えればあきらめもつく・・・。

ここまで来てよかった。





「いや、私もお引き受けすると言った以上、なおさせて頂きますよ。」

「え?いや、でも、基盤とか壊れてたら・・・」

「いや、先ほど見せた私のなおしたOM-2、あれから部品をとってでもなおします。」

「え?でも、それじゃ・・・」

「お代は大丈夫です。最初に言っていたお値段から、なるべく変わらないようにしますから。」

「いや、そうじゃなくて、そんな完成してるカメラを壊してまで・・・。申し訳ないというか・・・。」

「一度お引き受けしますと言った以上、必ず直してみせますよ。」

おじいさんはにこりと笑った。

僕は、思わず頭を下げていた。




最初の見積もりは、直せるならついでにプリズム交換もお願いします、という話もしていた。

しかし、実はプリズム交換用のカメラももう買ってしまっていて、それを持参してもいいですか?

ということで、見積もりから、かなり値段を引いて頂いた。

ところが、持っていったら、OM-10はまだまだ絶好調。

もったいないから、お使いなさい、とおじいさんの手持ちのプリズムで交換して頂くことに。

大丈夫ですよ、値段は、最初に言った値段でしますから。

おじいさんのカメラをなおしたいんでしょう?

と、ニコニコと言って下さった。

相当な割引額でおじいさんは仕事を引き受けると言って下さっていた。



その上、新品同様に組み上げてあるカメラをばらしてまで、このカメラを直して下さるという。



                               ※※



狐につままれたような、白昼夢をみたような、不思議な感覚で部屋を後にした。

不思議な、それでいてとても暖かい感覚。

部屋を出るまでに、どれだけたくさんのありがとうございますを言っただろう。



                               ※※



小さい頃、「とぶ船」を売っている店に憧れた。

迷い込んだ路地にある古物商で売られていた、小さな、そして大きな船。

その店には二度と行き着くことができない、そんな店。



「終わりのない物語」を売っている古本屋、それを想像しただけでドキドキした。

飛び込んだ先にあった、重厚ないかめしい古本屋。

そこで売られている本の向こうに広がるファンタージェン。



街の路地や、住宅街の中に何気なく佇んでいる小さな時計屋や古物商。

その置くに座って、黙々と時計を直すおじいさん。



物語の中にだけ存在することを許された、素敵なおじいさんの小さな店。

本当にそんな店があったのを知って、少しドキドキ。

直したカメラは代引きで郵送してもらうことに。

だって、なんか、二度とあのお店にたどり着けない気がしてさ。

でも、きっとまた行っちゃうけれど。



引退、などと言われず、いつまでもいつまでもお元気でお店を続けて頂きたいなぁ・・・。

あの店は、まさに、物語の中にしか存在しない、そんな夢のようなお店なのだから。



不思議な白昼夢を経験したい方は、ちょっと古いカメラを片手に、大分まで行ってみてはいかがでしょうか。

とても不思議で、なつかしい、でも、よく知っているような、とてもあたたかい気持ちにさせてくれる

小さなカメラの修理屋さんが待っていて下さいますよ♪
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by hot_soul | 2009-01-17 16:51 | 夜の戯れ言