筑紫野 あしき
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こんな夢を見た。
洞窟の中。
たき火の前。
DAIは冒険者。
たき火の向こうにホイミン。
「ねーねー、なんで、あの時声をかけてくれなかったの?」
「あ゛ー、君、悪いモンスターだと思ったからさ。」
「ひどーい。」
「ごめんごめん。」
「普通、ああいう風に立ってるモンスターが居たら声をかけるじゃないかー。」
「まあねぇ…。でも、ほら、避けられる争いなら、避けた方がいいじゃない。あんまり争いたくないしさ。」
「……。」
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DAIの家の団地を出たところにあるスーパーの脇を通り過ぎたら、
そこはもう阿志岐の原。
DAIが東京で生活していた頃、福岡に戻るたびに散歩をしていたあの田圃道。
東京に戻る前の日は、いつも阿志岐のたんぼ道を歩き回って、
体一杯に空気を詰め込んで、東京に戻っていたっけ…。
DAIはこの景色が大好きだ。
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万葉の歌人達が都に戻る前に、
この阿志岐の景色を楽しみ、宴会を開いていたのを知ったのは、
つい最近のことだ。
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その阿志岐の原で、1日、85歳のおばあちゃんが土佐犬に襲われて、
側溝に落ちて死亡した。
やりきれない思いのする事件だった。
色々ある。
色々あるけれど、85歳の人生が、犬に襲われて終わったのかと思うと、
もう、堪えきれないほど、切なくなってしまう。
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なぜ、ちょっと犬を綱に繋いでおかなかったのか?
なぜ、そのちょっとのルールを守れなかったのか?
犬は人間の最高のパートナーだと思う。
でも、
だからこそ、
ルールは守るべきだったのではないのだろうか?
守るべき、最低のことを「ルール」と言うんだと思う。
ほんのちょっとのルールを守れないことで、
どれだけの不幸が待っているのか。
人は、愚かだ。
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茨城の東海村で、
行方不明になっていた認知症のおばあちゃんが見つかったそうだ。
冷え込みが厳しく、凍死してもおかしくない状況で、
おばあちゃんは、野良犬を膝にのせて寝ていたそうだ。
犬の温もりが、おばあちゃんを救ったのだろう、と。
悲しい事件の後で、ちょっと、ホッとする報道だった。
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「いや、君が良いモンスターだって知ってたら、声をかけたんだけどねぇ。ごめんねー。」
「争いたくなかったから声をかけなかったの?」
「うん、そう。ごめんねー。」
そういうと、ホイミンは、なんだか嬉しそうに
ふわんふわんと笑っていた。
by hot_soul
| 2007-12-07 23:12